公害健康被害補償対策として、国は昭和四十四年「公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法」を制定し、また、東京都においては、昭和四十七年「大気汚染に係る健康被害者に対する医療費の助成に関する条例」を制定し、被害者の救済を図ってきた。
しかし、これらは、当面の緊急措置としての医療費等の支給であり、また、対象者が限定されているなど被害者の救済に万全を期するとはいい難いものであった。
【公害健康被害補償法の施行】 このような状況を踏まえて、事業活動その他の人の活動にともなって生ずる相当範囲にわたる著しい大気の汚染または水質の汚濁の影響により健康を損った人々を迅速かつ適正に保護することを目的として、特別措置法を抜本的に見直した「公害健康被害補償法」が昭和四十九年九月一日から施行された。
港区では、昭和四十九年十一月にこの法律にもとづく「第一種地域(大気汚染地域)」に指定されたことにより、認定患者にたいし、(一) 医療費、(二) 障害補償費、(三) 児童補償手当、(四) 療養手当、(五) 遺族補償費、(六) 遺族補償一時金、(七) 葬祭料の七種類の補償給付事業を行なってきた。そのほか、認定患者の健康の回復、保持、増進を図るため、リハビリテーション、転地療養などの公害保健福祉事業を合わせて実施している。
なお、東京都の「大気汚染に係る健康障害者に対する条例」にもとづく認定患者は、四十八年一七二人、四十九年二七二人、五十年二八二人と増加してきた。しかし、港区が、公害健康被害補償法にもとづく「第一種地域」に指定されたことにより、本事業はしだいに法による補償に切り換えられ、認定患者は、五十三年十一月末現在六人に激減している。