【公園の役割】　公園は人間の生活にとって欠くことのできない公共施設である。その機能も、休養やレクリエーションの地として、青少年の健全育成の場として、あるいは公害の防止と災害の際の避難地として、また、街に美観と緑を与え秩序ある街づくりに貢献するなど多岐にわたっている。しかし、公園はこのように重要な役割を担っているにもかかわらず、その整備は立ち遅れていて、必要な水準よりはるかに低いのが現状である。
【区内公園の現状】　港区内には昭和五十二年三月現在、九一ヵ所、約七二万平方メートルの公園・準公園・児童遊園がある。内訳は、区立公園二九、児童遊園五五、都立公園四、海上公園二、国民公園その他都市公園に準ずるもの一で、面積比はそれぞれ三二・六%、四・五%、四三・九%、一・四%、二七・六%となっている。区立公園・区立児童遊園は数の上では圧倒的に多いが、面積では全体の三割に満たない。また、港区民一人当たりの占める公園面積は、三・四二平方メートルで、千代田区二九・三〇、渋谷区六・一一、中央区五・一六、台東区三・五一についで二三区中第五位にある。しかし、東京都が「東京都行財政三ヵ年計画」(昭和五十二年)で当面の達成目標としている都民一人当たり五平方メートルにはなお遠い。しかも港区のような都心地域において公園を増設することは用地確保の面からみてきわめて困難な実情にある。
【歴史をしのぶ公園】　港区内の大規模公園には歴史をしのぶ名高い公園が多い。もっとも長い歴史をもつ芝公園は明治六年、旧芝離宮恩賜庭園は大正十三年、台場公園は昭和三年にそれぞれ開園されている。なかには芝公園、台場公園のように、時には高射砲陣地となり、時には戦災者の避難場所となるなど、受難の道のりを歩んだ公園もある。
【国立自然教育園　有栖川宮記念公園と高橋是清翁記念公園の区移管】　区内で最大の規模を誇る国立自然教育園は公園ではないが、それに準ずるものとして扱われている。自然が急速に失われつつある都内で、いまなお武蔵野の面影をしのぶことのできる数少ない場所の一つである。歴史的に由緒ある同園は、現在は国立科学博物館付属の自然教育園として学術研究を行なうとともに、一般にも公開されている。また、昭和九年に開園された有栖川宮記念公園は、有栖川宮の記念として高松宮宣仁親王から東京市に寄付されたものである。昭和十六年開園の高橋是清翁記念公園は、昭和十一年のいわゆる二・二六事件の際、反乱軍におそわれて暗殺された同翁の業績を後世に伝えるため同翁記念事業会が東京市に寄付したものである。
　両公園はその後も都立公園として存続してきたが、昭和五十年の特別区制度の改革に際し東京都から港区に移管され、現在は区立公園となっている。
【区立公園の整備】　この二つの公園を含む二九の区立公園のうち一五ヵ所(一の橋、飯倉、狸穴公園など)は昭和三十年代の前半までに東京都が戦災復興区画整理事業として造成し、その後港区に無償贈与したものである。残り一二ヵ所が港区が独自に造成した公園であり、亀塚(昭和二十七年開園)、青葉(三十年同)、麻布桜田(三十五年同)以外は、すべて昭和四十年代に設置しており、それには檜町(四十年開園)、東八ツ山(四十一年同)、西桜(四十三年同)、白金(四十四年同)、本芝(四十五年同)、笄(四十五年同)、六本木(四十六年同)、高輪(四十六年同)、塩釜(四十七年同)の各公園がある。
【区立児童遊園の整備】　このほか、児童の遊び場となっている児衆遊園は、昭和二十五年に金杉橋、絶江、広尾、桑田記念、雷神山の五ヵ所を設置して以来、現在までに五五ヵ所開設している。児童遊園は規模が小さく他の公園に比べて比較的造成しやすい。そのため、昭和五十一年には三ヵ所開設しており、今後も増設の予定である。
【昭和六十年の目標】　しかし、区立公園などは面積も大きくなるので新規の造成がむずかしい。地価の高騰のみならず、用地そのものを生み出すための大規模な再開発が必要だからである。こうした困難な諸事情を打開するため、東京都および港区は、都立公園、児童遊園、運河埋立て、芝浦処理場上部公園(仮称)、区立公園などの造成に努力を注いでいる。また、港区は公園整備の目標を区民一人当たり五・五平方メートル(昭和六十年)の確保においている。
【遊び場対策】　公園・児童遊園の不足を補完するため、土地所有者の協力を得て遊休地を一時開放し、子どもたちの遊び場を積極的にふやしていくために、昭和四十一年十月八日、港区遊び場対策本部を設置し、以来別表のとおり区内の各所に遊び場を開放・整備してきた。
　遊び場は、原則として一〇〇平方メートル(三〇坪)以上で使用期間は一年以上とし、用地は無償使用とするという設置基準により運営している。