(四) 港区工業の生成・発展と現状

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 機械金属工業を中心とした港区の工業は、太平洋戦争によって壊滅的打撃を受け、戦後の復興期を経て、昭和三十年代からの高度経済成長期に入り、港区が過密化して工場公害が激化するようになると、これに代わって都心型産業として、出版・印刷業や、建設業の比重が高まってきている。
 したがって、現在の港区工業をみた場合、第一は港区が都心地域化するにしたがい、その集積の利益を求めて新規開業がふえる印刷業と建設業の二業種があげられる。これらはいわば都心型業種ともいうべきものである。次は、港区の都心地域化によって大きく変貌せざるをえない機械金属工業と家具製造業であり、いわゆる伝統的産業としての旧工業地帯・集団型の工業である。これらの業種は、次第に生産集団としてのまとまりが失われつつあり、立地環境はますます厳しい状況を呈している。
 さらに、これらの中小企業の下請として集団的に立地している零細企業層にとっては、存立基盤そのものが脅かされ、取引範囲・活動領域の狭さのゆえにオフィスビル、マンション等近隣の高層ビル化の進行によって、地域環境が変貌しようにも移転することができず、工場拡張もできず、取引先の移転・機能変化に対応できない状態になっている。
 これからの港区工業は、社会的経済的状況の変化や地域環境の変貌によって、高地価・過密は印刷業と電気機械業に、交通混雑は職別工事と家具などの業種に、従業員確保難は家具と金属製品に、同業者の競争は建設業と印刷業に、公害防止の高まりは総合工事業と金属製品にというように、それぞれ深刻な影響を与えることになっていくであろう。