(五) 港区中小企業対策(行政の対応)

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 以上述べたような港区の中小企業の特性に対応して、企業自身の努力と行政の施策について概観することとする。
 戦後間もない昭和二十六年(一九五一)九月、新橋の美術クラブにおいて創立総会が開かれ、港区内二七の商店街とその会員一、五一〇人が港区商店街連合会を結成した。以後、昭和五十一年に創立二〇周年を迎えた時点では、その組織も四五商店街となり、会員も二、〇〇〇人をこえる団体にまで発展した。
 また、工業関係の諸企業も、愛宕工業会をはじめ区内六団体が一体化し、昭和四十年には港区工業団体連合会を結成し、その会員数は九四五を擁するまでになった。さらに、区内の伝統産業の一つである家具業界と協力しつつ、産業展示会を開催するなど港区工業の振興発展に多大の貢献をしてきており、港区もこれにたいし全面的に援助し、組織育成について協力してきた。
 この間、港区としても昭和二十八年には、区内中小企業振興対策の一つとして、当時の金融難対策のために総額二、〇〇〇万円の短期融資を実施することとし、芝・芝商工・同栄・港および東都の五信用金庫を通じて融資のあっせん事業を開始した。これが昭和五十年代のこんにち中小企業対策の中心をなす港区融資制度の端緒となっているのである。
 昭和五十三年の時点で年間二七億五、〇〇〇万円の融資枠を、およそ一、〇〇〇人の中小企業経営者が利用している。
 さらに、商工相談窓口を区民部商工課に設置し、専門の中小企業診断士を配置して、日常的に経営相談に応じている。
 昭和五十一年度からは、さらに下請のあっせん相談をも開始して、東京都下請振興協会との連携を図りつつ、下請に関する親企業・子企業の取引の円滑化等に寄与してきた。このほかにも、区長の付属機関として学識経験者や区内の産業界代表をその構成委員とする港区中小企業振興協議会を設置し、港区の中小企業対策のあり方などを諮問しつつ対策を推進してきたのである。
 商店診断、優良商店コンクール、優良従業員表彰、商業・工業それぞれに従事する者のためのレクリエーション、従業員講習会、経営者のための研修会等々を開催してきたことも、その対策の具体的な現われである。
 港区が行政として中小企業対策をすすめている基本方針は、企業者自身の経営改善努力を側面から援助するため経営に必要な情報を提供すること、経営改善のための資金需要に応えるため区が一部利子を負担するなどの融資制度の充実である。
 しかしながら中小企業対策としては、企業側の努力と行政側の役割および責任を明確にしたうえで施策を講ずることが肝要である。