わが国の学校給食は、戦前、欠食児童・貧困家庭児童の救済としてはじまったものであるが、戦後の学校給食はこれと異なり、栄養上、国民食生活上の配慮や学校衛生および教育活動としての見地も加味され、教育(活動)の一環として実施されたという特色をもっていた。
右記の次官通達により、まず、同年十二月中から東京、神奈川、千葉の三都県の三〇〇校(約三〇万児童)に対し試験的に実施されはじめた。パン・ミルク・おかずの三種による本格的な学校給食が実施されるのは、昭和二十五年七月、占領軍による小麦粉の放出を機としてである。本区では、これにともない給食室の完備、備品等の整備に多額の区費を投じ、衛生設備も着々と充実してきた。また、地元およびPTAの協力によって「私費負担」も含め内容の充実が図られるとともに、また、当初多くの学校で旧ボイラー室を使用していたのを改築しなおし、給食室の改善拡張をすすめた。
こうして学校給食は普及し昭和三十一年には、その意義にかんがみ学校給食法の改正をみ、中学校にも普及されることになり今日に至っている。(なお、学校給食実施にともない、準要保護児童に対する給食費補助も行なわれた。)
学校給食風景
表3 学校給食の実施(昭和二十六年) | |
本表は昭和二十六年一月中の平均を掲載した。したがって一週五日を原則とするが冬期休業その他の関係で給食日数は各校とも一定していない。 |
校 名 | 給食人員 | 児童1日平均 | 1人1回食費 | 1人1ヵ月経費 | |
熱 量 | 蛋白質 | ||||
人 | カロリー | グラム | 円 | 円 | |
桜 田 | 六二三 | 五九九・〇〇 | 二六・八六 | 九・五〇 | 一五〇・〇〇 |
南 桜 | 七三八 | 六一〇・〇〇 | 三一・〇〇 | 七・五〇 | 一五〇・〇〇 |
西 桜 | 四〇三 | 五七二・五二 | 三〇・三四 | 七・五〇 | 一二〇・〇〇 |
鞆 絵 | 八六三 | 五九一・一〇 | 二一・一〇 | 七・〇〇 | 一一二・〇〇 |
桜 川 | 一、三三七 | 六〇九・八八 | 二八・〇四 | 九・一三 | 一二〇・〇〇 |
神 明 | 七四五 | 五二二・〇〇 | 二一・九〇 | 七・五〇 | 一五〇・〇〇 |
竹 芝 | 五六九 | 五二八・〇〇 | 二一・五〇 | 八・〇〇 | 一二八・六九 |
芝 | 四一二 | 四七五・〇〇 | 二〇・三〇 | 五・八八 | 一〇〇・〇〇 |
赤 羽 | 一、五三四 | 五五七・〇〇 | 二三・三〇 | 七・五〇 | 一五〇・〇〇 |
南 海 | 六二〇 | 五二〇・〇〇 | 二三・四〇 | 八・〇〇 | 一五〇・〇〇 |
芝 浦 | 八一二 | 五五一・四〇 | 二六・一〇 | 六・五八 | 一〇五・三一 |
御 田 | 七三〇 | 五〇一・〇〇 | 一九・五六 | 七・五〇 | 一五〇・〇〇 |
高輪台 | 一、九三六 | 五二九・〇〇 | 一九・七〇 | 七・五〇 | 一五〇・〇〇 |
白 金 | 一、八七六 | 五三一・〇〇 | 二三・一〇 | 八・〇〇 | 一六〇・〇〇 |
三 光 | 九五一 | 五三三・四〇 | 二三・八〇 | 九・三八 | 一五〇・〇〇 |
神 応 | 六四三 | 四八一・三六 | 二〇・七〇 | 七・五〇 | 一五〇・〇〇 |
麻 布 | 一、四四八 | 六七八・〇〇 | 二七・三〇 | 一〇・七九 | 一六〇・〇〇 |
南 山 | 一、三六六 | 五四九・〇〇 | 二二・六〇 | 八・八二 | 一五〇・〇〇 |
本 村 | 一、一六五 | 四九九・〇〇 | 二〇・九〇 | 八・七〇 | 一五〇・〇〇 |
笄 | 一、三六七 | 五七八・〇〇 | 二二・五〇 | 七・二二 | 一五〇・〇〇 |
氷 川 | 五九四 | 五六四・〇〇 | 二二・九〇 | 九・三七 | 一五〇・〇〇 |
赤 坂 | 四四〇 | 五七〇・〇〇 | 二九・五〇 | 九・三八 | 一五〇・〇〇 |
檜 町 | 八二〇 | 五三五・〇〇 | 二一・三〇 | 六・九七 | 一五〇・〇〇 |
青 山 | 一、一〇三 | 五四七・〇〇 | 二二・五〇 | 一〇・五七 | 一五〇・〇〇 |
青 南 | 九二九 | 五五八・〇〇 | 二七・三〇 | 七・四六 | 一五〇・〇〇 |
【学校保健衛生】 また、学校保健衛生が果たした役割も大きい。戦後の民主化のもとで、「児童憲章」などにも具体的に示されているように、児童の「人としての権利」の保障が叫ばれ、法的にもその基盤が整備された。戦後初期にはとくに子どもの健康・衛生上の環境の向上は大きな課題であった。当時の眼病トラコーマの流行への対策は、その典型的な事例であった。
こうしたなかで、日ごろ児童の健康管理・安全対策・体位向上に果たした学校保健衛生の役割は重要であった。当時それは、国民医療の前進や、国民の衛生習慣の確立・普及、結核等国民病的な疾病対策にも先導的な大きな役割を果たした。
本区でもこのために、学校ごとに各科専門医および薬剤師を委嘱・配置した。これによって各種予防接種、各種保健行事等を実施した。
昭和二十七年(一九五二)には、委嘱薬剤師により、学校用薬品器材の整備・点検が行なわれ、養護教諭を中心とする日常の学校衛生の設備と態勢の充実が図られた。
また、児童・生徒のみならず、教員、学校一般職員の結核検診、細菌検査なども行なわれた。
こうして、児童・生徒の教育をうける権利を満たし民主教育をおしすすめる諸条件が、さまざまな課題を残しつつも順次整備されていったのである。
表4 学校保健行事の実施状況(昭和二十五年度)
地区別 | 行事日時 | 実施人員 | 実 施 対 象 |
芝 | 自5月 1日 至5月27日 | 一七、九二一名 | 幼、小、中 1班~3班 定期身体検査 (3ブロックをもって実施) |
自5月10日 至5月25日 | 一、三七〇名 | 小、中 学校歯牙抽出調査 | |
自5月16日 至5月31日 | 一七、八七三名 | 清潔教育実践強調運動実施(各学校) | |
自6月24日 至7月13日 | 一六、三八六名 | 小、中 ツベルクリンB・C・G実施(小一年除く入学前実施) | |
自6月26日 至6月27日 | 五二名 | 消化器伝染病(特に赤痢)防疫対策実施児童生徒は各学校 ごとに実施、小学校給食調理従事者腸寄生虫検査実施 | |
自7月14日 至7月18日 | 一八、三六一名 | 小、中、幼教職員含む 定期腸チフス、パラチフス予防接種実施 | |
自9月 1日 至9月15日 | 一、七七七名 | 小学校第六学年男女各校一名選抜 東京都健康優良児童審査 | |
自9月21日 至9月25日 | 三二七名 | 鞆絵小一年、二年、教育庁保健課より歯科診療車による 検査診療実施 | |
自9月16日 至9月25日 | 一〇六名 | 小、中 一六校 特殊教育対象調査実施 | |
自9月26日 至9月29日 | 五名 | 養護衛生担任教諭 健康教育指導者養成講習開催(文部省主催) | |
自10月 1日 至11月10日 | 一八、九九八名 | 小、中 寄生虫検査実施 | |
自10・13 至12・6・5日間 | 四五七名 | 幼、小、中 教職員結核検診実施 | |
自25・12月 9日 至26・ 3月15日 | 二、九一九名 | 学校歯科予防処置実施(小一年対象) | |
麻 布 | 自4月12日 至5月 3日 | 六、五〇一名 | 幼、小、中 定期身体検査 |
自6月21日 至8月17日 | 六、六五〇名 | 幼、小、中 定期腸チフス、パラチフス予防接種 | |
自7月 1日 至7月20日 | 五、八〇四名 | 幼、小、中 寄生虫予防検査 | |
10月27日 | 一六八名 | 幼、小、中 教職員結核検診 | |
赤 坂 | 自9月 1日 至9月10日 | 四、八〇三名 | 幼、小、中 定期身体検査 |
自10月 1日 至11月10日 | 四、一五二名 | 幼、小、中 寄生虫予防検査 | |
自10月 1日 至12月10日 | 一四一名 | 幼、小、中 教職員結核検診 |