(三) 港区国民年金の発足と歩み

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【国民皆年金】 公的年金制度には、国民年金制度のほかに厚生年金保険、船員保険、共済組合などがある。国民年金以外は、会社や工場、官公庁などで働いているサラリーマン(被用者)を対象にした制度で、いずれも戦前からある制度である。ところで、これらの被用者を対象にした年金制度に加入できなかった人たち、つまり自営業者、五人未満の小企業の労働者、農林漁業従事者などには長い間年金制度はなかった。近い将来に老齢化社会をひかえて、これらの人たちのために昭和三十四年に発足したのが国民年金制度である。この制度によって、いわゆる「国民皆年金」が実現をみた。厚生年金や共済組合年金などが職域ごとに加入する制度となっているのにたいして、国民年金は居住地域ごとに個人で加入することになっている。国民健康保険の場合は、発足と同時に「国民皆保険」が実現し、加入者はその日からでも国保による治療がうけられるわけだが、国民年金ではこの点いささか事情が違う。年金制度は保険料を原則として二〇年ないし二五年間積立ててからはじめて年金の受給資格ができるわけで、年金制度の発足から何十年も経たないと、本当の意味での「皆年金」の実現にはならない。
 昭和三十六年に国民年金の保険料納入がはじまってから、まだ十数年しか経過しておらず、種々の経過措置が講じられてはいるものの「皆年金」の実現は将来のことになる。なお、年金制度が数種類に分かれているため、転職などによって加入する年金制度に変更があった場合にも通算される制度が昭和三十六年十一月にできている(通算年金通則法施行による)。