【都営住宅に併設された保育園】　昭和三十七年(一九六二)十二月、区内青山北町五丁目(現　北青山三丁目)の都営住宅の一階に、区立青山保育園が開設された。開設当時に「結構ずくめの豪華版」などのキャッチ・フレーズで報道されたので国賓クラスの外国人をも含めた見学者が跡を絶たなかった。同園がこれほど一般に関心をもたれたのは、その規模もさることながら、都営住宅への併設という新しいアイデアが高く評価されたことであった。
　青山保育園には、青山簡易保育所といわれた昭和三十四年から三十七年にかけての前史がある。三十年代はじめこのあたりは兵舎を改造した二階建て住宅が立ち並び、道路はほとんど舗装されていなかった。青山簡易保育所は、現保育園の門前にあった区役所出張所が廃止されたので、その建物を利用して定員四〇名の施設として開所された。日雇労働で働く母親の子どもたちが多かった。土地は狭く建物は古く、冬季には隙間風が吹きこみ、屋内も保育園向きには造られていなかった。関係者の願いは新しい保育園造りにあったが、地価高騰のさなか、とくに地価の高い都心地域となった場所柄も手伝って、その実現はなかなか困難であった。ところが、この青山簡易保育所の目前、青山北町五丁目に都営住宅が建つこととなったため、それに併存させる保育園建設という新アイデアが実を結ぶことになったのである。
　地価が急騰していた都心部にふさわしいこのアイデアは、その後、都内各区の保育園建設にとりいれられていったが、その先鞭をつけたのが、実にこの青山保育園の建設であった
【区内保育園の実数】　港区では、このあと逐次保育園の新設をみ、また、白金保育園など古い建物も改築されて近代的な明るい保育園が増えていった。昭和四十年代は港区にとって保育園の増設時代だといってもよい。昭和五十三年十月現在、区立保育園一四、私立保育園四、合計一八園、定員一六八〇名の幼児が保育をうけている。
　なお、港区ではゼロ歳児保育についても、二三区に先がけて昭和四十二年十二月から新設の南麻布保育園で一八名のゼロ歳児保育をはじめた。その後、新設された保育園には、いずれもゼロ歳児の定員を設け、五十三年十月現在、区立の一〇園で定員一一〇名のゼロ歳児保育を行なっている。