今から約二八〇万年前に更新世(こうしんせい)を迎えると、それまで温暖で安定していた地球の気候は寒冷化しはじめるが、約八〇万年前以降になるとおおよそ一〇万年周期で寒冷な氷期と温暖な間氷期(かんぴょうき)を交互に繰り返すようになる。旧石器時代というと寒冷な気候がイメージされるが、温暖な時期もあったのである。最後の温暖な時期は最終間氷期と呼ばれ、そのピークは一二万五〇〇〇年前である。気温の上昇により極地の氷が解け、海水準は現在よりも五~一〇メートルほど上昇し、現在の関東地方平野部のほとんどが水没した。
この温暖化のピークを過ぎると気温は再び下がり、小規模な気温の上下変動を繰り返しながら、二万年前にもっとも気温が下がる最終氷期最寒冷期を迎える。この時期の年平均気温は現在より八度ほど低く、海水準も一三〇メートル程度低下する。それに伴い、深度の浅い間宮海峡と宗谷海峡は陸化、大陸・サハリン島・北海道は陸続きとなり、比較的深い対馬海峡や津軽海峡も大きくその幅を狭めた。この時期の東京に目を向けると、東京湾も浦賀水道以北は完全に陸化し、その中央部には多摩川や荒川、流路を変える前の利根川などが合流する古東京川が流れていた。しかし、最寒冷期を過ぎると気温は再び上昇して海進が進み、現在の関東地方に近い海岸線が形作られることになる。