動物相の変化

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 動物相については、港区のある関東地方など地域ごとの変化をみることが難しいため、列島規模でみていきたい。
 現在の日本列島の動物相は、更新世低海水準期の大陸からの動物群の流入とその後の環境への適応によって形作られた。東シナ海が陸化し大陸からの動物移入の玄関口になるタイミングは、中期更新世において六五万年前、四三万年前の二回あり、六五万年前には中国南部からトウヨウゾウ・シナサイが、四三万年前には中国北部からナウマンゾウが渡来して原棲種に加わった。その結果、中・大型陸棲ほ乳類に限れば、トウヨウゾウ・ナウマンゾウ・シナサイ・ヤベオオツノジカ・ニホンジカ・ニホンムカシジカ・オオカミ・クズウアナグマ・キツネ・タヌキ・ノウサギ・ニホンザルからなる動物相が北海道以外の地域に形成されたが、トウヨウゾウとシナサイは後期更新世までにその姿を消した(図2-1-3-2)。
 一方、北の玄関口である北海道は中期更新世の化石産出地が少なく、その状況は判然としない。しかし、約一二万五〇〇〇年前の後期更新世にはナウマンゾウ・マンモスゾウ・ヤベオオツノジカが現れ、ナウマンゾウとヤベオオツノジカは本州以西の地域から渡来したと考えられている。マンモスゾウは陸橋化した海峡を越え、シベリアからサハリン島を経由して北海道に至ったもので、同時期に渡来したヘラジカ・オーロックス・ステップバイソンなども含めて「マンモス動物群」と呼ばれる。日本に人類が現れるのは約四万年前になるが、最終氷期でもっとも寒冷化が進むその時期に、ヘラジカやステップバイソンなど跳躍力の大きな動物だけが津軽海峡を越えて本州以南の地域に現れる。海峡はもっとも浅いところでも一四〇メートルの水深があり陸化はしなかったが、冬期に形成される氷橋を渡ったと考えられている。

図2-1-3-2 後期更新世後期の本州・四国・九州の代表的なほ乳類

河村善也「更新世の哺乳類」『旧石器時代(上)』(講座日本の考古学1、青木書店、2010)所収の図を転載