第二項 旧石器時代後半期の石器文化

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 姶良Tn火山灰の列島規模での降灰を契機にさらなる寒冷化が進むと、旧石器時代人の作る石器にも変化が現れる。その傾向は前半期後半に現れたナイフ形石器に顕著で、東北地方、関東・中部地方、近畿・中国・四国、九州の各地で地域性の強い石器文化が成立した。一方、二万年前に気温がもっとも下がり低海面期を迎えると、海峡を隔てた大陸や朝鮮半島の旧石器文化と密接な関係を窺わせる地域も出現する。九州地方のナイフ形石器の形態は朝鮮半島とよく似たものであり、北海道では細石刃を用いる最新の石器文化がサハリン島を経由して大陸から到来している。
 この細石刃石器文化は、それまでの石器文化と異なり、動物骨などを用いた柄の側面に細い溝を彫り、そこに小型で規格的な細石刃を連続的に埋め込み使用する。北海道に到達した細石刃文化はその後、急速に列島各地に広がり、ナイフ形石器文化と入れ替わる。この細石刃文化は、中国南部などから九州地方を経由した別ルートでも伝わったため、北海道から東北地方にかけての地域と、中部・関東以西の地域ではその製作技術が異なる。なお、本州以南の地域では概ねナイフ形石器文化から細石刃文化へと移行するが、中部地方や関東地方では木葉形の尖頭器文化が盛行する時期がその間にあり、移行の様相が各地域で画一的ではなかったことがわかる。