旧石器時代後半期の遺跡

53 ~ 56 / 323ページ
 港区内でまとまった数の旧石器が出土した遺跡としては、旧白金御料地内武家屋敷跡遺跡(港区白金台五丁目、No.69)がある。淀橋台の南端部を構成する白金台の標高二五メートルに立地する。昭和六十一年(一九八六)に白金館址遺跡調査会による発掘調査が行われ、立川ローム第Ⅳ層中の東西六・二メートル、南北二・三メートルの範囲から合計六五六点からなる礫群(図2-3-2)とそれに伴う石器一一点が出土した。礫群を構成する礫の石材は、砂岩が六〇・五パーセント、チャート三九・五パーセントで、遺跡周囲の自然環境から持ち込まれたものと考えられている。そのほとんどは赤化・破損し、半数以上にスス状あるいはタール状の黒色付着物が認められることから、礫群は火を用いた調理施設であると考えられている。石器一一点の内訳は、二次加工剥片四点、使用痕と考えられる微細剥離をもつものも含めて剥片三点、砕片一点で、使用石材は、黒曜石・チャート・安山岩・シルト岩からなる。定形的な道具類などは出土していないが、保存状態のよい礫群は旧石器時代の食料の調理を考えるうえで貴重な発見となった。   (渡辺丈彦)
 

図2-3-2 旧白金御料地内武家屋敷跡遺跡出土礫群

白金館址(特別養護老人ホーム建設用地)遺跡調査団編『白金館址遺跡Ⅰ』(1988)所収の図を一部改変のうえ、転載

図2-3-3 港区内旧石器時代遺跡および遺物出土地分布図

国土地理院陰影起伏図・標準地図を下地として、港区埋蔵文化財包蔵地(遺跡)分布図(令和2年3月1日現在)をもとに作成。番号は港区遺跡番号、遺跡名等は原始第四章末尾の「港区内旧石器・縄文・弥生時代遺跡および遺物出土地一覧」を参照。