約一万二〇〇〇年前に始まった温暖化により、早期末から前期前葉のころ、海水面は現在に比べて二~三メートルほど高くなった。その結果、古川をはじめとする港区域の河川にも海水が浸入した。しかし、その後は徐々に気温が下がり、海面の低下が進んでいく。もっとも冷涼化は緩やかで、次の中期にかけてくらしに適した気候が続いたのであろう。都内の時期別遺跡数の変化をみると、前期に入ったころから中期に向けて急増しており、人びとが安定したくらしを営み続けたことが理解される。
港区域も例外ではなく、前期前半以降、遺跡の数が急増する。ただし遺跡は多いが、竪穴住居跡等の遺構は少ない。また、港区域で貝塚の形成が始まるのも前期であるが、貝塚については後項で触れていく。