丸山貝塚

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 現在の芝公園に存在する丸山貝塚は、明治期から知られていた貝塚であるにもかかわらず、本格的な考古学的調査が行われていないことから、正確な位置や形成された時期、貝層を構成する貝種などの詳細が知られていなかった。芝丸山古墳が築造された台地の下部に位置し、貝塚付近で採取された土器から後期の貝塚ともされていた。
 平成九年、貝塚の位置・範囲・形成時期などの確認を目的とする発掘調査が行われた。その結果、古川に面する南向き斜面の下の方に立地し、東京礫層と考えられる砂礫層上に形成されていることや、二五×二五メートルほどの範囲に比較的良好な状態で残存していることが確認された。貝層の厚みは六〇~一〇〇センチで、斜面から離れるにつれ厚みを増すことも観察されている。
 貝層を構成する貝種はハイガイ・マガキ・ハマグリ・アサリなど二二種に及ぶが、マガキが主体となることがわかった。貝類以外ではハゼ類の椎骨、タイ類の鱗(うろこ)が僅かに検出されたのみで、獣骨・鳥骨などはみられない。人工遺物では、貝層中から中期後半の土器小片、貝層直下から中期末葉の土器小片がそれぞれ一点出土した。他に条痕文系土器片と土器片錘(へんすい)が含まれ、二点のアカニシ製貝輪の未製品が二点出土しているが、人工遺物はきわめて少ない。
 こうしたことから、丸山貝塚は中期後葉から後期に、斜面に形成されたハマ貝塚とすることができる。
 

図3-2-3-1 丸山貝塚の貝層
提供:東京都教育委員会