西久保八幡貝塚

78 ~ 79 / 323ページ
 飯倉台地に位置する西久保八幡貝塚は、北東に迫り出す舌状台地の北側斜面に立地する斜面貝塚で、典型的なサト(ムラ)貝塚である。丸山貝塚・伊皿子貝塚とはだいぶ様子が異なり、生活臭が漂っている。
 貝塚は上下二層の貝層から成り、下の貝層は堀之内2式期から加曾利B1式期、上の貝層は加曾利B2式期から安行(あんぎょう)1式期に形成された。検出された動物遺体は、貝類二八種・魚類二三種・ほ乳類八種・両生類三種・は虫類二種・鳥類二種で、食用などに供されないものも含まれる。動物遺体をやや細かくみていこう。
 下の貝層はハイガイが多く全体の五〇パーセントを占め、ハマグリがこれに続く。次いで、オキシジミガイ・マガキが多く採取されている。これに対し、上の貝層はオキシジミガイがもっとも多く、オオノガイ・サルボウガイ・アサリ・マガキ・ハマグリと続き、ハイガイが激減する。魚類では、下の貝層からサメ類・エイ類・ニシン科・カタクチイワシ・ウナギ・アナゴ科・サヨリ属・クロダイ属・マダイ・カレイ科などが出土し、上の貝層ではニシン科・ウナギ・サヨリ属など下の貝層と同じ種類が出土した一方、下の貝層でみられたサメ類・カタクチイワシは出土していない。このように、貝類や魚類は上下の貝層で明らかな違いが認められている。食料になったと考えられるほ乳類では、イノシシ・キツネ・シカ(いずれも上下の貝層)、ノウサギ(上の貝層)、タヌキ(上下の貝層下の土層中)が出土している。出土数はイノシシがもっとも多く、下の貝層では比較的若い個体がみられたが、上の貝層からは若年から老年まで年齢幅が広いことが確認された。
 動物遺体以外の遺物では、多数の土器をはじめ、石器(打製石斧・打ち割り用礫器・石錘(せきすい)・砥石など)、牙・角製品(イノシシ牙加工品・鹿角製尖頭具など)が出土した。
 

図3-2-3-4 西久保八幡貝塚の貝層