二枚貝の殻の表面を観察すると、成長線と呼ばれる年輪のような細かな筋が見える。成長線は一日に一本の割合で形成されることに加え、貝の成長が遅くなる冬季には間隔が密になることが知られている。これを冬輪と呼ぶが、海水温がもっとも低くなる二月中旬ごろに形成されることも明らかになっている。そこで、最後に形成された冬輪から殻のもっとも外側までの成長線を数えることで、その貝が二月中旬ごろから何日後に採取されたかがわかる。貝塚調査では、この方法を用いて貝の採取季節を推定することがある。
伊皿子(いさらご)貝塚の調査では、ハイガイとハマグリを分析した。ハイガイの分析結果は本章二節三項に記したとおりだが、ハマグリについては春の後半に採取された可能性が示された。
図3-コラム2-1 貝の切断面(上)と成長線(上図右下の〇部分の拡大)