コラム プラントオパール

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 イネ科・カヤツリグサ科などの草本(そうほん)やクスノキ科・ブナ科の木本(もくほん)の中には、土壌の中に含まれる珪酸(けいさん)をその細胞の中に蓄積するものがある。珪酸の蓄積が進むと体内に細胞の形をとどめた珪酸の殻が作られ、これを植物珪酸体と呼ぶ。朝露に濡れたイネの葉の表面がキラキラ輝いて見えるのは、これが光を反射するためである。この植物珪酸体をもつ植物が土中埋没後に腐食が進み、取り残されたものをプラントオパールと呼ぶ。
 プラントオパールは肉眼ではわからないほどの小さな粒子であるが、化学的・物理的に風化に強く、条件によっては半永久的に土中に残る。また、植物珪酸体の大きさや形は植物によって異なるため、遺跡の土中から見つかるプラントオパールを調べることにより、遺跡が営まれていた期間に存在した植物の種類もわかる。
 土中の珪酸を多く取り込む植物の一つにイネ科がある。イネはもともと日本には存在しない植物であり、遺跡からイネのプラントオパールが見つかれば、その地で稲作が行われていたことを示す証拠となる。また、イネには栽培環境や技術も異なるインディカとジャポニカの二種類があるが、その両者はプラントオパールの形態も異なる。遺跡で見つかるイネのプラントオパールの形態を詳細に調べることにより、栽培イネの原生地と考えられるインド西部や東南アジアからの稲作の伝播や変遷の過程が明らかにされることが期待されている。   (渡辺丈彦)
 

表4-3-1 港区内旧石器・縄文・弥生時代遺跡および遺物出土地一覧

本表および原始各章末尾の分布図は、港区埋蔵文化財包蔵地(遺跡)分布図(令和2年3月1日現在)をもとに作成した。番号の前に※印が付された遺跡は、旧石器・縄文・弥生時代遺跡として認定されていないが、発掘調査において当該期の遺物が出土した地点である。備考欄中、(旧)は旧石器時代、(縄)は縄文時代、(弥)は弥生時代を示す。