166 ~ 167 / 323ページ
 右掲の『延喜式』所載貢納品の最後に馬がみえる。東国は名馬の産地としても知られていた。『延喜式』兵部省には諸国の馬牛牧が列記されていて、武蔵国には檜前(ひのくま)馬牧・神埼(かんざき)牛牧が挙げられているし、左馬寮御牧(みまき)条には、勅旨牧(ちょくしまき)として武蔵国内の石川・小川・由比・立野の各牧を挙げている。
 これらの六牧の現地比定は例によって困難であるが、檜前牧については①埼玉県児玉郡上里町勅使河原、②同美里町駒衣、③東京都台東区浅草。神埼牧については①東京都新宿区旧牛込、②埼玉県春日部市内牧。石川牧については①神奈川県横浜市(旧都筑郡)、②東京都八王子市(旧多麻郡)。小川牧については東京都あきる野市(旧多麻郡)。由比牧については東京都八王子市(旧多麻郡)。立野牧については①神奈川県横浜市(旧多麻郡)、②東京都府中市・立川市(旧多麻郡)、③埼玉県さいたま市(旧足立郡)などの諸説があり、多くは多麻郡方面に想定されているが、一部、二三区内に想定する説もある。
 さらに長保四年(一〇〇二)成立の政務・法制関係書である『政事要略』などには、秩父・小野牧がみえている。小野牧は小野氏との関係が推測されるが、それ以上のことは定かではない。