ウシの骨の発見

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 伊皿子(いさらご)貝塚遺跡は、港区三田四丁目に位置する、縄文時代から平安時代および近世の複合遺跡である。発掘調査が昭和五十三年(一九七八)から五十四年にかけて行われ、縄文時代後期の貝塚を挟み、縄文時代早期から晩期、弥生時代中期、古墳時代から平安時代までの包含層(考古学的な遺構や遺物を含む地層)や集落跡、墓跡などが重層的に発見された。
 ウシの骨は、調査範囲の南東隅近くで検出された第二号方形周溝墓(ほうけいしゅうこうぼ)の、西溝北端の緩やかな壁の途中に掘られたピット(小さな穴)内から出土した(図3-コラム-1)。第二号方形周溝墓は、弥生時代中期宮ノ台式期に貝層を掘り込んでつくられたもの(原始 第四章第二節)であり、ウシの骨もまたこの時期のものとされた。
 出土したウシの骨は頭骨のみで、下顎骨(かがくこつ)が頭蓋からはずされ、頭蓋骨の上に人為的に載せられた状態で出土した。ピットの直径は二五センチほどで、深さやどのような土が詰まっていたのかは不明確であった。したがって、発掘調査報告書では出土位置と状態から弥生時代のウシとされたものの、多少の疑問がもたれていた。そこで港区立港郷土資料館(現在の港区立郷土歴史館)では、近年、技術の進歩によりきわめて高い精度が期待できるようになった理化学的方法による年代測定を行うこととしたのである。測定は平成二十四年度(二〇一二年度)に、左右の下顎骨から抽出したコラーゲンによる炭素14年代測定を行った。
 

図3-コラム-1 ウシ頭骨出土状況写真