『港区史 通史編 近世 上・下』(以下、近世編と略記)では、「近世」という時期の港区域のありようをとりあげる。「近世」がさす時代についてはさまざまな議論があるが、現行の日本史の教科書では、織田政権・豊臣政権の時期にあたる安土桃山時代と徳川政権の時期にあたる江戸時代をあわせて「近世」とみている。ただし、港区域においては、後北条氏の滅亡後、天正一八年(一五九〇)に徳川家康が関東に入府し、慶長八年(一六〇三)に幕府を開いてから、本格的な都市化がすすみ、大きく地域が変容したことから、とくに江戸時代を対象とすることにした。なお、幕末については、近代編と扱う年代が一部重なるが、近世編ではとくに江戸時代の地域社会からの視点で台場と外国公館をとりあげた。