江戸の拡張

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 以上、本項では絵図を手がかりとして江戸の拡張、特に港区域の空間的変容過程を追ってきた。かつての研究では、江戸の町は明暦の大火後の都市改造によって急激に拡大を遂げたとみられていたが、「寛永江戸全図」などの新出江戸図からは、すでに寛永末年の時点で江戸の都市域は郊外までかなり拡張していたことが明らかになってきた。
 港区域について言えば、「寛永江戸全図」の段階で都市域は高輪の泉岳寺・如来寺付近、南麻布付近まで拡がっており、その後は高輪南部や白金などへのさらなる拡大が見られる一方で、点在する町場や屋敷の隙間を埋めるような都市化も進んでいく。したがって江戸の開発とは単純に外側への拡大のみならず、内側の高密化というもう一つの動きからも捉えられる必要があろう。本項で見てきたとおり、その基礎的骨格は一七世紀後半までにはおおむね完成するに至ったのである。  (岩本 馨)