江戸の大災害

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 まず、江戸時代の人々が、とくに歴史に残る大災害と認識していたと思われるものを、概観しよう。江戸時代にはさまざまな「年代記」といういわゆる年表が刊行され、さらにその内容は、いわば生活百科事典として当時よく読まれたと考えられる「節用集(せつようしゅう)」にも掲載されることとなった。表1-3-1-1には、幕末の節用集『江戸大節用海内蔵(えどだいせつようかいだいぐら)』(文久三年〈一八六三〉補刻、初版は宝永元年〈一七〇四〉刊)、日本と中国を比較した『掌中和漢年代記集成(しょうちゅうわかんねんだいきしゅうせい)』(嘉永三年〈一八五〇〉刊)、一枚摺(ずり)の『永代年代記大成(えいたいねんだいきたいせい)』(弘化三年〈一八四六〉刊)、幕末に作られた地震・火事・洪水・津波・落雷の番付「地震出火競(じしんしゅっかくらべ)」(図1-3-1-1)で、重複して取り上げられた江戸の災害四九件を示した。火災が一五件、地震が五件、火山の噴火が三件、風水害が一四件、疫病が一二件である。

表1-3-1-1 年代記・節用集・番付にみる江戸の大災害

年代記は、『江戸大節用海内蔵』(高井蘭山著 文久3年〈1863〉補刻、初版は宝永元年刊・天保4年〈1833〉増補)、日本と中国を比較した『掌中和漢年代記集成』(山崎美成編輯 嘉永3年〈1850〉)、一枚摺の『永代年代記大成』(細河並輔編 弘化3年〈1846〉刊)、番付は「地震出火競」(東京都立中央図書館特別文庫室所蔵 図1-3-1-1)

図1-3-1-1 災害の番付
「地震出火競」 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵