火山灰の検出状況

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 港区内の遺跡における宝永噴火の火山灰の検出例は、おおむね次のように分類されるが、降灰当初の状態で発見される例はほとんどないといってよい。
 まず、増上寺子院群‐源興院跡遺跡(No.22-2、図1-3-コラムB-2 三章六節参照)のように、一定規模の面的な広がりをもって検出される例である。増上寺子院群‐源興院跡遺跡では、火山灰が島状あるいは帯状に分布した状態で検出され、厚さが一〇センチメートルに達する箇所も確認されている。直下に道路状遺構が存在していたことから、墓道上に降下した火山灰の可能性が指摘されているが、一次堆積である確証は得られていない。

図1-3-コラムB-2 増上寺子院群-源興院跡遺跡で検出された宝永噴火の火山灰


 次に、土坑内に掃き捨てられたような状態で検出される例がある。増上寺子院群‐光学院・貞松院跡遺跡(No.22-1、図1-3-コラムB-3)、旗本花房家屋敷跡遺跡(No.172、図1-3-コラムB-4)、麻布龍土町町屋跡遺跡(No.171、図1-3-コラムB-5)など、近世遺跡でしばしば発見されている。このうち増上寺子院群‐光学院・貞松院跡遺跡の例は、火山灰層直上に、あたかも火山灰層をパッキングしているかのように粘性の強い土が載っており、火山灰対策の一端を示していると考えられ興味深い。

図1-3-コラムB-3 増上寺子院群-光学院・貞松院跡遺跡で検出された宝永噴火の火山灰

図1-3-コラムB-4 旗本花房家屋敷跡遺跡で検出された宝永噴火の火山灰
 提供:東京都教育委員会

図1-3-コラムB-5 麻布龍土町町屋跡遺跡で検出された宝永噴火の火山灰


 第三の例として、遺構覆土中あるいは造成土中に塊として、あるいは斑点状に混入している例がある。本コラムで分析対象とした湖雲寺跡遺跡(〈No.187〉パスコ編 二〇二一)の検出状態は、本例に該当すると考えられよう。こうした状態で広範囲に火山灰が分布する場合もある。
 最後に、自然の窪(くぼ)みに残存したと考えられる例があることを挙げておくが、第三の検出例との分別が困難なことが多い。