宗派・地区別寺院数

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 時期は下るが、ここで文政期(一八一八~一八三〇)における港区域の宗派別寺院数を、表3-2-1-1として示しておきたい。典拠である「寺社書上」(国立国会図書館所蔵)は、文政期に幕府が江戸の寺社にそれぞれの基本情報をまとめた冊子を提出させ、それらを地区別に編集したものである。港区域でいうと、増上寺(浄土宗)のような一部の有力寺院は含まれていないが、それでも江戸の寺院をほぼ網羅している。表3-2-1-1では、港区域と重なる地区に限定して、寺院数を宗派別に示している。

表3-2-1-1 宗派・地区別寺院数(文政期)
「寺社書上」(国立国会図書館所蔵)をもとに作成。今里の江龍寺(曹洞宗)は白金に含め、渋谷の長谷寺・大安寺(共に曹洞宗、現在の西麻布に所在)は麻布に含めた。


 全体で二五二か寺もの寺院が確認できる。この段階では、特に芝・高輪・二本榎(現在の高輪一~三丁目)・三田・麻布方面が、寺町のような密集地区となっていた。宗派としては、浄土宗・真宗(浄土真宗、一向宗)・曹洞宗・日蓮宗(法華宗)が多いが、その他の宗派も確認でき、特定宗派に限定されない都市的な特徴が表れている。このような特徴は江戸全体に当てはまることだが、港区域は江戸全体の中では天台宗寺院の割合が小さく、浄土宗・真宗寺院の割合がやや大きい地域である。なお、社僧(天台宗・真言宗など)や修験の堂舎は、本表ではカウントしていない。麻布の盛徳寺(せいとくじ)(曹洞宗)は本氷川(もとひかわ)明神社の別当でもあるため、ひとまず除いている。  (上野大輔)