以下では、主に①~④の要素と寺檀制度について順次解説したい。まず①の本末関係(本末制度)は、本寺と末寺という寺院間の上下関係を指す。近世には、幕府の政策の影響も受けて宗派別の本末制度が確立した。それぞれの宗派の本山を頂点として、全国各地の末寺が編成されたのである。本山に直属する直末寺(じきまつじ)の下に、更に末寺があるという具合に、重層的な本末制度が形づくられた。一方で、全体から見れば少数だが、本末関係上の本寺を持たない無本寺(むほんじ)という寺院もあった。
本末関係の具体的なあり方は、本末帳から知ることができる。本末帳は諸宗の本山が作成して幕府に提出したが、本山の側にも保管された。また、本山以外の寺院でも必要に応じて、本末関係を明記した帳簿類が作成・保管されている。