このような諸宗の教義・信仰をめぐっては、しばしば論争が繰り広げられた。宗派間では、浄土宗・真宗・日蓮宗の間で比較的多くの論争があったが、同じ仏法に優劣はないとして論争を批判的に捉える立場もあった。この立場は一見寛容なものだが、論争を繰り広げるような他者は排除されている。
宗派内においても、特定の教義・信仰などをめぐって対立が生じ、敗れた側は異義・異安心(いあんじん)などとして弾圧された。真宗の三業惑乱(さんごうわくらん)のように、俗人を巻き込んで対立が拡大・激化することもあった。三業惑乱とは、身(しん)・口(く)・意(い)の三業を揃えて祈願請求(きがんしょうぐ)することで、極楽往生が定まるとする三業帰命(きみょう)説をめぐる、近世後期の西本願寺教団最大の紛争であり、他派にも波及した。三業帰命説は西本願寺門主により誤りとされ、
阿弥陀如来を疑いなく信じることが正しい帰依のあり方とされた。 (上野大輔)