本章の内容

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 本章では、こうした港区域の町人地の特徴を、六つの節に分けて解説する。本節では、住民による町運営の実態や、町々の代表である名主の特徴・役割を検討し、町の仕組みを考える。二節では、町人地の土地(町屋敷)に着目し、地主の特徴や土地の価格(沽券(こけん)金高)、不動産経営の実態を通して、港区域の町人地の特徴を探る。三節では、店借層を中心とする住民の家族構成、出身地、生業など、庶民の具体的な様相や、門前町における日常生活のありように迫る。四節では、商工業を中心にどのような生業が営まれたのかを検討し、港区域の地域的な特徴を明らかにする。
 以上が町人地に関する節であるが、五節では、港区域の外縁部に存在する百姓地、つまり村としての側面に注目する。港区域に町人地が形成されたのは江戸時代になってからであり、本節を通して、都市化する過程という時間的な経過や空間的な広がりについて、理解を深めることができるであろう。そして六節では、現代に残る町人地の痕跡を、考古学の成果から紹介する。  (髙山慶子)