屋敷改の「町屋鋪帳」

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 屋敷改とは寛文八年(一六六八)に創設された幕府の役職で、当初は江戸周辺地域における町屋の建設を統制した。宝永七年(一七一〇)にいったん廃止された後、正徳三年(一七一三)に再び設置されると、享保四年(一七一九)には、武家が所持する屋敷の異動を管理する職務が加えられた(宮坂 二〇〇八)。先に見た「諸向地面取調書」は、この武家屋敷管理の一環として編さんされた。
 国立国会図書館に所蔵されている旧幕府引継書には、「町屋鋪(まちやしき)(敷)帳」と題する五冊の帳面がある。そのうちの二冊は「南方 町屋鋪帳」と題され、年代は天和三年(一六八三)三月晦日とある。残る三冊は「町屋鋪帳」とあり、元禄九年(一六九六)九月(二冊)と一一月(一冊)に、屋敷改の花房勘右衛門と飯田四郎左衛門が作成したものである(元禄九年一一月の一冊のみ、原本の表紙の記載は「町屋敷帳」である)。「南方 町屋鋪帳」には隅田川西岸の南部(品川・芝・麻布・霊岸島など)、「町屋鋪帳」には東岸(深川・本所)の町々における、武士・浪人・医師などを地主とする町屋敷の表間口・裏行(奥行き)、地主名、家守名が書き上げられ、地主の異動を記した貼り紙も添付されている。史料の題名や体裁・書式が同じであることから、「南方 町屋鋪帳」も屋敷改が作成したと考えられる。