住民の転入簿-「辻氏御用留」の「人別送」

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 江戸町人の住民情報を知りうる史料には、人別帳のほかに、住民の移動を記録した帳簿がある。渋谷長谷寺(ちょうこくじ)門前・渋谷御掃除町(ともに現在の西麻布二丁目)の名主が作成した「辻氏御用留」(全一四冊)には、安政六年(一八五九)から慶応三年(一八六七)にかけての住民の転入を記録した「人別送(にんべつおくり)」という帳簿がある(本章一節の表4-1-4-2)。「辻氏御用留」は諸書類の写しや雛形を内容ごとにまとめたものであるが、「人別送」のみは押印がなされた原簿である。以下ではこの帳簿から、住民の転入の様子を見ていく(小國 一九九〇)。