幕末の港区域に大きな影響を与え、またこの地域を特徴づけたのは、区域に置かれた外国公館であった。外国公館の設置は、安政五年(一八五八)に幕府が欧米五か国と修好通商条約を締結し、条文に外国公使の江戸駐在が規定されたことによる。この結果、翌安政六年から欧米諸国の外国公館(公使館、総領事館)が現在の港区域内の寺院に置かれ、欧米の外交官が「首都」江戸へ駐在を開始する。
ここでは、幕末の港区域に外交官が駐在することになった経緯と、設置された外国公館について概観するとともに、外国人が港区域内に滞在したことによる影響、そして幕府と港区域の人々は外国人にどのように対応しようとしたのか、という点を述べてみたい。