旧『港区史』や『新修港区史』には港区域に当該期存在した手工業として錦絵・絵双紙類、和傘、漉返紙(すきかえしがみ)および和紙加工品、履物類、織物と染物、煉油・ろうそく、装身具、和洋家具の生産が挙げられているが、それらについてはそこで一通り詳細な説明がなされているので、そちらを参照されたい。ここでは紙数の関係上、改めて取り上げることはしない。
明治前期に港区内に多様に存在したこれらの手工業も、醸造業同様、この地域での近代産業の発展につれ衰退していき、職人たちは近代産業の賃労働者となっていくという側面があったのである。(井奥成彦)