この時代に設立されている社会教育の施設としては、まず図書館として以下の「青山会館図書館」や「日勝文庫」「皇民会記念文庫」が挙げられる。
青山会館図書館は大正一四年(一九二五)四月に赤坂区青山南町に開館している。赤坂区に長く居住した徳富蘇峰(とくとみそほう)の成簣堂(せいきどう)文庫の一部が財団法人青山会館に寄贈され、これを基本として同会館内に簡易図書館を設けた。図書館の運営は財団法人青山会館が行った。
日勝文庫は圓通寺住職中里日勝の経営により昭和四年(一九二九)に赤坂区一ツ木町に建造された鉄筋コンクリート三階建の建物で、同年五月より一般に公開されたものである。蔵書は、中里の収蔵する仏典および東洋哲学に関する国書を中心としている。
皇民会記念文庫は、海軍中将の宮岡直記が、長年収集してきた宮岡文庫をもとに赤坂区中之町に開設したもので、読書を好む人や青年修養に資するよう、大正一五年(一九二六)一〇月に皇民会記念文庫として創設し、公開したものである。宮岡は皇民会の主唱者で、武士道に関して造詣が深く、国史や郷土地理の研究に興味を持っていた。そのため文庫の蔵書も、歴史、地誌および武士道に関する国書がその大部分を占めていた。