④保健救療

107 ~ 107 / 405ページ
 生活困窮者にとっての大問題は健康問題である。貧困であるがゆえに疾病とも密接であった。細民家庭が概して不健康状態にあることは社会政策上、最も寒心すべき状況であるとされた。とりわけ細民地区は一般に衛生状態不良にして、衛生行政への理解が乏しく、不摂生に陥り、健康を害していることを知りながら、医療へのアクセスが絶たれ、いたずらに時間を経過し、不治の重態の出現へとつながった。
 そこで方面委員には、救療・施薬の道を講ずることが期待される。具体的には、病院・医師との連絡を保持し、診察・施療・入院に便宜を求めることなどであった。方面委員は、済生会治療券、医師会治療券、減価診療取り扱いおよび病院への入退院取り扱い、妊産婦保護取り扱い、行路病人ならびに負傷者などの保護救済に速やかに対応しなければならなかった。
 加えて、児童に関する健康相談も重要な仕事であった。とくに大正期においては内務省や社会政策関係者は、将来の学業や職業を定めて、そのキャリアの形成を実現することができるように、児童の健康に関心を寄せていた。そのため児童の将来をより確かなものとするために、市設健康児童相談所が設置された。しかしこの施設は一般には十分に知られておらず、利用者も制限的であったことから、方面委員はこの施設の宣伝に努め、児童の健康を助長し、ひいては隠れた病源に気づき、未然に防ぐよう活動することが求められていたのである。