工場の様相

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 前述したように一九三〇年代以降、港区域をはじめ東京市内の建築物は高層化した。表4-1-1-5は、昭和七年(一九三二)と昭和一二年の港区域の工場・倉庫の階数を表したものである。工場、倉庫の建築物数は五年間で急増している。ただ、ここでは高層建築物ではなく平屋や二階建ての建築物が増加したことが確認できる(高層建築物は他の用途に利用されていたと考えられる)。後述する当該期の港区域での工業発展が工場の建築増加につながった。
 また、港区域では古川沿いなど古くから工場が集積していた地域に加え、明治末頃から進められた東京湾沿いの埋立地に大規模な工場群が建設された。例えば、芝浦三業地で著名な芝浦一丁目の付近には、梁瀬自動車の芝浦工場、東京瓦斯の製造所、西芝浦四丁目には塩水港精糖の東京工場、沖電気の芝浦工場などが建設されていた。ほかにも埋立地には、東京市電気局や逓信(ていしん)省の倉庫も置かれるなど、倉庫群も形成されていた。  (高柳友彦)
 

表4-1-1-5 港区域の階数別工場・倉庫数

東京市編『東京市統計年表 第30回』(1934)、同『東京市統計年表 第35回 第1部一般統計』(1939)をもとに作成