まず、表4-7-1に着目すると、麻布区は、人口・面積に比して、日蓮宗の寺院や檀家が多いことが目を引く。代表的な寺院としては、麻布区桜田町の妙善寺(西麻布三丁目)や同じく桜田町の乗泉寺がある。とりわけ乗泉寺は、明治前期に寂れたものの、住職の懸命な活動により、明治後期から信者を増やしていった。しかし、東京大空襲で焼失したことから、戦後、現在の渋谷区に移転した。
表4-7-2についても言及しよう。神社数・神職数ともに芝区が東京市一五区内で最多である。芝区は、府社・郷社・村社の数も最多となっている。なお、府社は赤坂区も芝区と同数で最多である。神道一三派の状況を示す表4-7-3については、二章六節二項で示した表2-6-2-3と比べ、変動が多いことが一目瞭然である。誕生して日も浅いため、施設などの移転が多かったのであろう。
なお、昭和一〇年一二月末日における東京市全体のキリスト教の状況は、『東京市統計年表 第三三回』によれば、会堂および講教所が二四二、宣布者が五二四、信徒が五万九〇七六であった。ただし、資料の不足から、芝・麻布・赤坂の各区におけるキリスト教の状況を示すことはできない。
表4-7-1 昭和10年(1935)における港区域の寺院の状況
注)宗派の順は、東京市『東京市統計年表 第33回』(1937)に掲載されているとおり。
東京市『東京市統計年表 第33回』(1937)をもとに作成
表4-7-2 昭和10年(1935)における港区域の神社の状況
注)神職の数は、兼務者数を除く。
東京市『東京市統計年表 第33回』(1937)をもとに作成
表4-7-3 昭和10年(1935)における港区域の神道13派の状況
注)教派の順は、國學院大學日本文化研究所編『[縮刷版]神道事典』(弘文堂、1999)による独立公認年に基づく。
東京市『東京市統計年表 第33回』(1937)をもとに作成