第三項 銃後の諸団体の活動

306 ~ 308 / 405ページ
 区役所における兵事係は、徴兵検査該当者への伝達や徴兵検査場への引率をはじめとする徴兵事務、召集令状や戦死公報の伝達などの業務を担当していたが、こうした兵事係の事務の補佐などにもあたった兵事関係団体について、以下に簡単に触れておきたい。
 まず、兵事関係団体としては、帝国在郷軍人会が挙げられよう。帝国在郷軍人会は、明治四三年(一九一〇)に伏見宮貞愛(ふしみのみやさだなる)親王を総裁として発足した予備役や後備役、退役軍人を会員とする団体であり、当初は陸軍軍人のみを対象としていたが、大正三年(一九一四)には海軍軍人も合流した。同会の主要な事業としては、①勅語・勅諭等の奉読式、四大節(四方拝〈一月一日〉・紀元節〈二月一一日〉・天長節〈四月二九日〉・明治節〈一一月三日〉)などにおける遥拝式、②軍人精神の鍛練、軍事学術の研究および演練、③陸海軍記念日における祝典、戦没者の祭典、戦死者・傷痍軍人および公傷病兵の遺族に対する慰藉、④会員の応召準備整頓、召集事務補助、徴兵志願兵検査および簡閲点呼参会者への指導、⑤入営者に対する軍事教育、青年学校の訓練幇助、青少年団の指導協力、⑥風致改善の協力、社会公益事業の幇助、公安維持ならびに非常時における救護事業の援助、⑦会員の親睦・相互扶助、会員および家族の扶助・慰藉、⑧精神修養および軍事一般知識の普及に関する講演・機関誌の発行などである。本部は陸軍省に置かれ、府県に支部、市町村に分会が置かれた。港区域では、芝・麻布・赤坂の各区に分会(のちに連合分会)が設置され、区の兵事係による徴兵事務などに協力している。
 また、出征兵士の家族の生活扶助を目的とする団体なども設立され、芝区および麻布区では兵事義会、赤坂区では徴兵慰労義会と称した。これらの団体は、入営者や帰郷者の送迎会の主催や、遺族や傷痍軍人に対する生活扶助なども行っていた。なお、赤坂区では、徴兵慰労義会と出動将士後援会が昭和一四年(一九三九)に合併して赤坂区銃後奉公会となっている。
 このほかには、婦人団体として愛国婦人会や大日本国防婦人会などの支部が設置されており、愛国婦人会は、主として戦没将兵の遺族や傷痍軍人の救護を、大日本国防婦人会は出征兵士の見送りや慰問袋の調達・発送などを事業として行っていた。なお、愛国婦人会は内務省が後援する団体であり、大日本国防婦人会は陸軍省が後援する団体であった。この他の婦人団体として、兵事関係団体ではないが、文部省が後援する学校教育や家庭教育への理解を主張する大日本連合婦人会があり、昭和一七年にこれらの三団体は大日本婦人会に統合されている。  (門松秀樹)