それでは、芝区、麻布区、赤坂区の契約者数の推移はどうだっただろうか。表5-1-4-1をみると、加入者数は芝区と麻布区が昭和四年度末に比べ昭和一六年度末が約三倍、赤坂区が約二.五倍に増加していることがわかる。東京市全体の増加率に比べ、三区の増え方は非常に緩やかだが、これは三区で早くからラジオが普及していたことを示している。また、一〇〇世帯当たりの加入者数をみると、芝区に比べ、麻布区と赤坂区が高い数字となっており、とくに赤坂区の普及率は統計を取り始めた当初から他区に比べて高く、昭和一六年度末では、東京市内で麴町区(一〇三)と日本橋区(一〇〇)に次ぐ普及率となっている。
港区域は、ラジオの普及率が市内においても早くから高く、新興住宅地を有する麻布区と赤坂区ではとくに早くからラジオが普及していたことがわかる。文明の入り口であり新時代の空気に触れやすかった三区は、新時代の機器であるラジオもいち早く受容したのである。 (後藤 新)
表5-1-4-1 芝区、麻布区、赤坂区のラジオ加入者数の推移
注1)かっこ内は100世帯あたりの加入者数
注2)全国は46府県に北海道支部と樺太、南洋の加入者を合計したものである。
注3)100世帯当たり加入者数は年度による表記の差異を統一するため小数点以下を切り捨てた。
社団法人日本放送協会編『聴取者統計要覧』(1930~1932)、同『業務統計要覧』(1933~1937)、同『聴取者統計』(1938~1941)をもとに作成