昭和二年(一九二七)竣工の駐日スペイン大使館大使公邸(当初は西班牙公使館、六本木一丁目)、翌三年竣工の駐日オランダ王国大使館大使公邸(当初は和蘭公使館、芝公園三丁目)は、ともに米国聖公会から派遣され立教学校の初代校長を務めた建築家ジェームズ・マクドナルド・ガーディナーの最晩年の作品(担当は建築事務所の上林敬吉)である。また、昭和六年の在日米国大使館大使公邸(図5-2-2-1、赤坂一丁目)と、同八年の在日カナダ大使館大使公邸(赤坂七丁目)は、いずれもアントニン・レーモンドが設計に参加している(米国大使公邸はハロルド・ヴァン・ビューレン・マゴニグルとの共同担当)。レーモンドはフランク・ロイド・ライトの帝国ホテル建築の際助手として来日した、現在のチェコ生まれの建築家で、港区域に長年居住して区外にも聖路加国際病院(東京都中央区明石町)や東京女子大学(東京都杉並区善福寺)などの作品を残した。米国大使公邸は戦後マッカーサーと昭和天皇が会見した場所としても知られ、平成一三年(二〇〇一)にはアメリカ本土の重要文化財に指定されている。
図5-2-2-1 現在の在日米国大使館大使公邸