公的施設・文化施設

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 公的施設としては、昭和八年(一九三三)竣工、警視庁総監会計課営繕係(越智操)設計による高輪消防署二本榎出張所(高輪二丁目)が注目される。ドイツ表現主義の流行を反映する曲線を随所に多用し円柱の望楼を供えたユニークな外観は地域のシンボルとして長年愛され、東京都選定歴史的建造物に選ばれている。
 区内には大規模な官庁建築として、昭和六年竣工で逓信省・郵政省本庁舎としても使用されたことがある旧逓信省貯金局庁舎(麻布台一丁目)や、昭和四年に竣工した旧逓信省東京簡易保険支局(のちのかんぽ生命保険東京サービスセンター、三田一丁目)が現存していたが、それぞれ令和元年(二〇一九)、同二年に取り壊された(後者はファサードのみ意匠を継承予定)。
 また軍の街としての顔を戦後もわずかに伝え、二・二六事件の現場としても知られていた旧陸軍歩兵第一連隊本部(のちの防衛庁20号館、赤坂九丁目)や、旧陸軍歩兵第三連隊兵舎(のちの東京大学生産技術研究所、六本木七丁目)も、二一世紀に入ってまもなく姿を消している。
 文化施設としては、大倉集古館(国登録有形文化財、虎ノ門二丁目)がある。築地本願寺(中央区築地)などのエキゾチックな建築で知られる伊東忠太設計による中国風建築は、昭和二年(一九二七)竣工の我が国初の私立博物館である。