民間業務施設

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 商業地として民間の店舗やビルが多く集まった新橋には、関東大震災前に建った最初期の商業ビルも近年まで現存していたが、急速に建て替えが進み、昭和七年(一九三二)竣工の堀ビル(国登録有形文化財、新橋二丁目)を残すのみとなった。維持に困難の多い民間所有であるが、共同利用によって保存と活用の両立を積極的に模索している例として注目される。
 また、オフィスビル街のなかに残る近代和風建築の店舗である大正一二年(一九二三)築の虎ノ門大坂屋砂場(国登録有形文化財、虎ノ門一丁目)も、地域の大規模再開発のなかで生き延びた稀有な例で、令和三年(二〇二一)には道路拡張に伴う曳家(ひきや)を経て保存された。
 芝浦港南地区には、昭和一一年(一九三六)築で、現在では都内唯一となった木造見番(花柳界の取り次ぎ事務所)建築であり、戦後は港湾関係者の宿泊所「協働会館」として使用されていた港区立伝統文化交流館(芝浦一丁目)が現存し、保存整備工事を経て令和二年(二〇二〇)から利活用が図られている。
 埋立地で工場が多い芝浦港南地区の歴史を伝える建物としては、昭和四年(一九二九)築の日本電気計器検定所別館2号館(旧東京電灯株式会社社屋、芝浦四丁目)が残されている。