特別区の特別な財政制度

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バブル景気とその崩壊は、港区の行財政運営にも大きな影響を与えた。ところで、特別区の財政は、一般の市町村のそれとは仕組みが異なり、特に、港区においては、特別区に特有の制度である「納付金」との関わりが重要な課題になっていたので、ここで整理しておこう。
一般の市町村の場合、税収は市町村民税(個人分・法人分)と固定資産税が中心であるが、税収には自治体間の格差があるので、これを調整し、税収の乏しい自治体の財源を保障するため、国税の一部を原資とする地方交付税が国から交付される。対して、特別区の場合、税収は区民税の個人分であり、区民税の法人分と固定資産税等は、東京都が徴収し、区間の税収格差を調整するため、都から特別区財政調整交付金が交付される。
交付される地方交付税、特別区財政調整交付金の額は、基準財政需要額(合理的かつ妥当な水準の行政活動を実施するのに必要な額)から基準財政収入額(標準的な状態で徴収が見込まれる税収等の額)を引いた差額であり、基準財政収入額のほうが多い場合は交付されない。そうした「不交付団体」は、自前の税収でやっていけるだけの財政力があると判断されるわけである。そして、港区は、他の区に比べて税収が豊富なため、オイルショック後とバブル崩壊後を除き、不交付団体となってきた。
ところで、一般の市町村の不交付団体は、単に地方交付税が交付されないだけであるが、特別区の不交付団体は、それだけでなく、基準財政収入額と需要額の差額を「納付金」として都に納めることになっていた。港区は、都に納付金を納める常連の区であり、かつて、納付金額が歳出総額の22%を占めるといった年度もあった。港区は、この納付金制度の廃止を長らく求めてきたのであるが、その実現は、平成一二年度まで待たねばならなかった。