地方自治法改正による特別区の内部団体化と港区

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昭和二七年三月に入ると状況が一変することとなった。三月一日には朝日・読売の二紙が合理化、効率化を求めるものとして区の内部団体化のみならず、区長公選制の廃止を盛り込んだ地方自治法の改正が進められているといった内容を報じた。この報道はそれまで自治権拡充を進めてきた特別区側にとっては驚愕の内容であり、事実確認をした特別区側は、危機意識を持つこととなった。それ以後、これまで推進してきた自治権拡充運動から、自治権擁護運動への転換を強いられることとなった。特別区側は民主的体制の維持を掲げ、国会での成立阻止を目指して連日国会議員らを中心に猛然と反対活動を続けたものの、昭和二七年八月に運動は実らず国会を通過し、地方自治法改正がなされることとなった。
それによって、区長公選制の廃止とともに特別区は都の内部的構成団体として位置付けられ、法令に定める権能および都条例により委任される権能のみを有する制限された自治体(法人区)と改められることとなった。また都から区に派遣されていた配属職員は、この時の地方自治法施行令第一〇条一項で「都知事は、主として国及び都の事務に関する特別区の区長の権限に属する事務に従事させるため、都の吏員その他の職員を配属するものとする」とされ、配属職員制度として確立した。
なお、区長公選制の廃止に関しては憲法違反ではないかということで、国会でも論争となったが、その後法廷での闘争に場を移そうとしたものの審理はなされないまま却下となった。