区長公選の維持をはじめとする自治権擁護の運動は、その根幹部分は逸してしまったが、一部国会審議の中で当初政府案の修正という形で実を結んだ面があった。その一つは地方自治法第二八一条一項の修正である。政府案では「都に区を設置し、これを特別区という」との文言であったものを旧来の「都の区は、これを特別区とする」という表現を維持したことである。もう一つは第二八一条の二第一項に関わるもので、政府の改正案では特別区の区長は「都知事が特別区の議会の同意を得てこれを選任する」とされていたものを「特別区の議会が都知事の同意を得てこれを選任する」という文言となった。最後に第二八三条において、政府案では「第二編中市に関する規定は、特別区にこれを準用する」であったが「準用」を修正して、旧来の「適用」という表現を維持したことである。これによって港区を含む特別区は行政区的性格を明白にしようとした当初政府案から一部踏みとどまることになった。なお、この区長の選任についての修正は、その後の区長準公選運動、公選運動の足掛かりとなる重要なものとなっていく。