昭和五九年一一月、港区議会は、四〇年前の広島・長崎の悲惨さを二度と繰り返してはならず、今こそ世界の恒久平和を求め、区として平和都市であることを宣言すべきであるという趣旨から、「核兵器の廃絶と人類の恒久平和を目指す港区平和都市宣言を求める決議」を全会一致で議決した。そして、先の戦争で、麻布・赤坂地区を中心に全区域の約半分が焦土と化した港区としても、区民とともに真の平和を求めるため、昭和六〇年八月一五日に核兵器の廃絶と世界の恒久平和を願い「港区平和都市宣言」を行った。さらに、同年から、戦争・被爆体験を語り継ぎ、平和の大切さを考える機会として、戦争や平和に関する資料を展示する「平和展」を毎年開催している。また、昭和六二年三月には、区役所新庁舎前庭に設置した北村西望作「平和の女神像」の除幕式が行われた。
平和都市宣言から二〇年が経過した平成一七年八月一五日には、区立芝公園に平和の象徴である「平和の灯」を設置するとともに、被爆アオギリⅡ世・クスノキⅡ世が平和の灯の周囲に植樹された。また、平成二二年四月には「平和市長会議」に加盟(現在は「平和首長会議」)、同二七年には「港区平和都市宣言三〇周年記念式典」が行われた。
平和への願いを次世代に繋げていくことにも積極的に取り組んだ。平成一六年度から、次世代を担う子どもたちに平和の尊さや平和について考える機会を提供するため、区立小学校において、著名人からの平和メッセージや港区平和都市宣言のパネルの展示、あるいは平和図書コーナーの設置を行う「巡回平和メッセージ展」を実施したり、同一七年度から戦争・戦災体験の語り継ぎや平和の尊さを考える会などの催しで活用してもらうためミニ平和展セットの貸出し事業を行ったりしている。
また、次代を担う高校生世代を対象に、平和関連施設の見学や長崎への派遣研修などにより、戦争や核兵器の悲惨さを学び、平和を築く意識を醸成するための「平和青年団事業」も昭和六一年度から続けており、その活動報告書や、平成一九年度から開催している「平和を考える集い」(同二九年度から「平和のつどい」)などを通して、幅広い世代に平和を考える機会を与えている。
さらに、「港区平和都市宣言」の趣旨に則り、広く核兵器の廃絶を訴え続けている。平成一六年五月に、アメリカ合衆国が実施した未臨界核実験に対して抗議文を送付して以来、ロシア連邦の核実験や朝鮮民主主義人民共和国の地下核実験などに対して毎年のように抗議文を送付するなど、核実験等に対する抗議行動を行っている。