港区では、人口減少に対応し、二一世紀を目指したまちづくりを区民とともに進めていくため、基本構想・基本計画に基づくまちづくりの基本方針、すなわちマスタープランの策定が必要であるとした。策定にあたっては、地区別特性調査、まちづくりマスタープラン(素案)の作成、素案に対する区民アンケートなどを実施した。さらに、学識経験者などにより構成された「まちづくりマスタープラン策定委員会」からの「まちづくり行政推進に関する提言」などを踏まえて、昭和六三年八月、総合的・体系的な「港区まちづくりマスタープラン」を策定した。
まちづくりマスタープランは、区全体の総合的な将来像を提示する「まちづくりの目標」、まちづくりの分野に沿った「テーマ別まちづくりの方針」、およびそれらの実現のための「まちづくりの方策」の三つから構成された。
まちづくりの目標を定めるにあたって、港区は、自然と歴史的景観や住宅、夜間人口など「地区の視点」と、高次都市機能、昼間人口、国際企業などの「首都の視点」を融合させて、「新しい都心イメージの創出」を目指すこととした。そして、これらのまちづくりの視点を踏まえて、その将来都市像を、「地区ごとの個性と魅力を備えた都心」「多様な居住が営まれる都心」「ヒューマンで創造的な仕事の場を備えた都心」「いきいきとした地域社会のある都心」という四つの理念から構成された「やわらかな生活都心」とした。
これを実現するために、元々の自然構造と地区ごとの個性を活かしながら、居住と各種都市活動施設の適切な棲み分けを図りつつ、先端的な商業業務施設の立地を、交通の結節点や骨組みに沿った特定の軸に誘導するとともに、周辺への無秩序な拡散の抑制に努めることとした。