一節四項や七項で述べたように、昭和四九年(一九七四)の地方自治法等改正により、区長公選制の復活や都区財政調整制度の変更などが実現したが、まだ多くの課題が残っていた。
その後、特別区長会から諮問を受けた特別区政調査会は、昭和五六年八月に「『特例』市の構想を――特別区制度の将来」を特別区政調査会第五次答申として示したが、これが次の都区制度改革への出発点となった。この答申では、特別区を普通地方公共団体でありながら、行財政上の特例を設けるという基本的考え方のもと、都区の役割分担に関して都は府県事務の他、一般市の事務である消防、上水道、清掃(一般引き物の収集運搬を除く)の役割を有するものとし、「特例」市は一般市の事務を原則に行うものとして、府県事務であっても基礎的な自治体で行うことが大都市の住民生活によってより適切かつ効果的なものについても担うものとした。都との財源配分、「特例」市間の財源配分も新方式とし、地方交付税についても都区合算ではなく、都と「特例」市を分離し、「特例」市分は一括して算出するという内容であった。当面の特別区側の主張はこの答申を基にしたものとなってくる。
なお、ここでいう「特例市」は、地方自治法の大都市制度の一つとして平成一二年(二〇〇〇)四月一日から施行され、同年一一月一日から同二六年四月一日にかけて存在した「特例市」ではない。