難航する都区制度改革

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このように平成二年の地方制度調査会の答申で具体的な改革の方向性が改めて示された一方で、実際の改革の実現にはそれから八年という時間を要するものとなった、その背景にあった最も大きな課題は清掃事業の事務移管問題である。清掃事業の移管は既に収集・運搬に関する事務は昭和三九年の地方自治法等改正で特別区の事務とされていたのだが、国会での議論を経て「施行は別に法律で定める日」と修正が加えられ、この時点まで結局未実施のままであった。それが地方制度調査会の答申の中で書き込まれ、最も基本的な基礎的自治体の事業の一つである清掃事業を都から特別区に移管することが都区制度改革として特別区が憲法上の基礎的自治体の地位を得るために必要なものとなったのである。
これまでは東京都に清掃局があり、二三区内の清掃事業を一手に抱えるものとなっていた。特別区が基礎的自治体に位置付けられるようになるために、清掃事業は住民が最も頻繁かつ身近に受けることとなる住民サービスで、それらを各区が自区内での処理を原則にゴミの収集・運搬・処理・処分を行うことが求められた。
この移管に当たっては、かつての福祉事務所や保健所の移管に続く、多くの職員の身分切り替えを必要とするもので、東京都側としても労使交渉を含めてまとめる必要があった。また、特別区側は必ず都区制度改革を成功させようと、そのために決して容易ではない自区内処理でも進めようと動き出し、そのための各種必要な施設や体制の整備も進めていった。
港区においても、平成五年に企画部に清掃移管対策の副参事を、同九年に清掃事業等の新たな事務事業の受入れ推進体制づくりとして、清掃移管対策課を設置し、準備にあたった。  (箕輪允智)