定住人口の確保が大きな課題となっていた港区にとって、港区六本木一丁目にある林野庁職員住宅跡地が一般競争入札方式で払い下げられることは避けねばならない課題であった。地価高騰による人口流出を招くばかりでなく、道路や公園などに供する公共用地を確保することが困難になるなど、区政に重大な影響を与えるからである。
そのため区は、良好な居住環境の整備、安定した定住人口の確保、そして地価の抑制などを図るために、住宅・都市整備公団による取得を要請していくことになった。区議会も、昭和六〇年(一九八五)第一回定例会において「六本木一丁目林野庁職員宿舎敷地に関する要望書」を全会一致で可決し、区の要請を後押しした。
しかし昭和六一年一〇月に林野庁は、公団への払い下げを断念し、一般競争入札を公告した。ここで区議会は、昭和六一年一一月、第一回臨時会を招集し、全会一致で「一般競争入札の撤回を求める意見書」を採択した。臨時会閉会後の現地入札説明会には、区長と区議会各会派の幹部が会場に集まり、一般競争入札への反対を訴えた。さらに、区と区議会の共同主催による緊急区民大会も開催され、「緑と太陽の光り輝くもとで、住民の心のふれあいを大切にするまちを心から望み、林野庁に対し、一般競争入札の撤回を求める大会決議」を採択し、林野庁に要請行動を行った。しかし、これらの懸命な要請行動にもかかわらず、一二月一日に一般競争入札は予定どおり実施されることとなった。