二節六項でも述べたが、清掃事業の事務移管問題により都区制度改革は難航していた。その後、都区間への各種調整や、都区制度改革に向けた区民意識の醸成のため、シンポジウムやパンフレットなどの作成を含むキャンペーン活動を行い、一方で国への働きかけを続けていった。さらに都においても、労使交渉が進められていくもののなかなか合意には到達しなかった。
そして、ようやく平成一〇年(一九九八)一〇月の地方自治法等の一部を改正する法律が成立した。当該改正は、平成一二年四月一日施行で、都との役割分担としては、特別区は基礎的な地方公共団体として、都が処理するものを除き、一般市町村が処理する事務を処理することとなった。また、特別区の性格は、都の存する区域における基礎的な地方公共団体であり、特別地方公共団体となることになった。昭和二七年(一九五二)以来、約半世紀ぶりに港区が法的に基礎的な地方公共団体の地位を取り戻すことができたのである。
また、この改正で調整三税は都と特別区の共有財産であり、その一定割合は特別区の固有の財源的な性格を有するものであると明らかにされた。加えて、港区にとっての念願であった納付金制度が廃止された。そして、これまで財政調整算定上財源不足額が生じた場合には都の一般会計から一時借り入れを行うことが可能な制度である総額補てん主義があったが、それは特別区の都に対する依存心を助長していると言われていた。改正によってこの根拠が失われ、廃止されることとなった。都区間の財源配分割合については清掃事業の移管に伴い平成一二年四月の都区協議会で、区側が五二、都側が四八とするものとなった。
なお、特別地方公共団体という位置付けについては、地方交付税制度における東京都と特別区を一つの自治体として扱う都区合算を前提にした都区財政調整制度が残ることから、位置付けを変更させることはできなかった。