地方創生と自治体間連携の推進

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人口減少克服と東京一極集中の是正を併せて行うことで経済の好循環と、将来にわたって活力ある日本社会を維持すること(地方創生)を目指した「まち・ひと・しごと創生法」(平成二六年施行)では、すべての都道府県および市区町村に対し、「地方版総合戦略」の策定を努力義務として規定した。
これを受けて、〝港区ならでは〟の地方創生の柱の一つとして掲げたのが、全国各地と連携した地方創生である。これは、それまでに港区が行ってきた全国各地の自治体との交流をさらに深め、互いの強みを生かし、弱みを補完する、自治体間相互の共存・共栄を目指す取組である。
平成二八年三月に策定した「港区まち・ひと・しごと創生総合戦略」では、基本目標の第一に「港区と全国各地の自治体がともに成長・発展し、共存・共栄を図る」を掲げ、区政の幅広い分野で全国との連携を推進することとした。また、同年四月から連携を推進する専管組織を設置し、他自治体との連携までの流れを明確化した。
古くから培ってきた全国各地域との連携・交流としては、各総合支所と、岐阜県郡上市や茨城県阿見町、山形県舟形町、秋田県にかほ市、福島県柳津町などとの交流がある。そうした交流は、東日本大震災の際に郡上市から水の提供を受けるなど、地域の活性化だけでなく距離を超えた絆づくりにも結び付いた。また、「商店街友好都市との交流に関する基本協定」を締結した自治体との交流を通じ、物産展も開催している。
一町から町村会(八町一村)との連携に発展するというモデルケースも生まれた。港区は、平成二六年に北海道豊富町と国産木材活用の協定を結んでいたが、北海道宗谷町村会の九町村全体との連携に発展した。そうした連携から、豊富町との豊富温泉体験WEEKのようなイベントや、みなとパーク芝浦での宗谷パネル&アート展ならびに宗谷MINATO出張所の開設などが行われている。
特筆すべきは、二三区では初めて「物と物」から「人と人」の交流へと発展させた事例である。宗谷版ワーキングホリデーは、宗谷の町や村に地域の仕事を手伝いながら滞在し、地域の人たちとの交流や学び、暮らしを体験するもので、費用の一部が宗谷地域から助成される事業である。また、職員交流事業も展開し、令和二年四月から福島県いわき市との職員交流が実施された。この交流により、地域間の相互理解を深めるとともに交流先自治体のノウハウを共有・還元することで相互の地域発展に結びつくことが期待されている。
SDGsに関連した連携も進められた。青森県平川市や秋田県大仙市の木質バイオマス、山形県庄内町の風力発電所、福島県白河市内の太陽光発電所と連携し、太陽光、風力など再生可能エネルギーによる電力の供給を進めたり、区内の公共施設・民間建築物等において、港区と「間伐材を始めとした国産材の活用促進に関する協定」を締結した自治体から産出された木材(協定木材)等の使用を促すことで、区内での二酸化炭素固定量を増やすとともに、国内の森林整備の促進による二酸化炭素吸収量の増加を図り、地球温暖化防止に貢献する取組も行っている。
このほかにも連携・交流のある自治体に関する各種情報発信、区有施設を活用した物販(「全国連携マルシェin芝浦」など)やパネル展などの連携イベント、障害者施設で生産した商品の相互販売など連携は多岐にわたる。さらに、こうした連携は自治体間に留まらず、一般財団法人地域活性センターや白金北里通商店会・北里大学北里研究所病院との連携、あるいは二三区で初めての「港区とよい仕事おこしフェア実行委員会との全国連携の推進に関する協定」の締結など、多様な主体との連携も進められた。    (名取良太)