経済低成長期(昭和四五~六〇年)

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表3-1-2は、経済低成長期の人口増加率と構成比を示している。人口増加率は、高度経済成長期とは大きく異なり、四六都道府県のすべてにおいて人口増加を示していた。特に人口増加が著しかったのは関東地方であり、中でも埼玉県と千葉県であった。次節において、港区の社会動態データを用いて再度確認するが、港区を含む東京都には戦後から経済低成長期までは、一貫して大量の人口が流入している。就学・就業のチャンスが多く、一〇代後半から二〇代前半の若者が集中するのである。しかしながらこの時期は、東京都内に流入後そのまま都内に定住することなく、埼玉県・千葉県・神奈川県を中心とした郊外へと移住することが多かった。そのため、東京都の人口増加率は3・7%と低く抑えられていたのである。
近畿地方においても大きな変化が見られた。大阪府の人口増加率は13・8%と低く、代わりに滋賀県と奈良県が、29・9%、40・3%と高い値を示していた。これも関東地方と事情は同じであり、就学・就業のチャンスを求めて大阪府に流入してきた人々も大阪府に定住することなく、郊外の滋賀県・奈良県に居住地を求めていたことが示唆される。東海地方については、最も高い値を示していた愛知県でも19・9%と、相対的には高くない値となった。
構成比を見ると、東京都・大阪府・愛知県で全国の人口の約四分の一を占めていた。経済低成長期の東京都と大阪府については昼間人口の集積が著しく、都心部の住宅の供給が追いつかなかったため、郊外化が進行することとなったと考えられる。

表3-1-2 経済低成長期の人口増加率と全国人口に占める構成比 

国勢調査データから作成